走れ!Aかっぱ〜 Season 4



ライバル


あたくしが現在働いている会社はアメリカの某B社で、その最大のライバル会社はフランスの某A社である。それまで日本のシェアを圧倒していたB社だが、かれこれ5年ほど前、とある重要大型受注案件で我々はA社に歴史的敗退をした。以来、なにかとA社のことは話題にあがる。

で、あたくしのオフィスは客の社屋の中にあり、そこにはA社もオフィスをおいていて、ライバルとはいえオフィスは近いし、お互いにそれなりのおつきあいもないことはない。ことA社のフランス人のジュール君は里帰りをすると必ずお土産をもってウチのオフィスに顔をだしてくれる。この余裕がまた憎らしいのだが、フランス語なまりのちょっと舌足らずな英語と、愛くるしい笑顔、そしてなんといっても半端なくおいしいチョコレートだったり焼き菓子!これらのフランス土産が我々を絶叫させる。ぐわーっ!また負けたーっ!

だいたいウチの連中の里帰りの土産といえば、ピンクとか紫、青とか一体どうしたらこんな色の食べ物を作ろうと思うのか、頼むから教えてくれよアメリカ人!!と叫びたくなるグミとか、脳天を突き破るほど甘く、歯にやたらくっつきまくるお菓子とか、もう絶望としかいいようがない。

こんなお菓子じゃウチのオフィスに客がよりつきませんよねぇ!?もーっ!

と、ちょうどオフィスに来ていた顧客J社のN川部長にあたくしの苦悩を訴えた。すると

「いや、みそぎさん、問題はそこじゃないんじゃないの?」

じゃなんですかい?あたくしが貧乳だからとでも?

貧乳については完全にスルーしてN川部長
「だって、A社のロゴの入ったストラップしてB社のオフィスに行くと、みそぎさんにストラップで首絞められるって、有名な話」

げっ!しまった!

「それに、B社担当だったウチの○○が、この間A社担当に変わったのでみそぎさんのところ挨拶いったら『てめぇ!裏切ったな!やっぱりコストコの肉のバーベキューより、ボージョレヌーボーとチーズがいいんだな!?あん?』って言われたって」

・・・そういえばそんなことも・・・(--;

もはやA社の前で完全に心の余裕をうしなっているあたくしである。

そんなあたくしを尻目に、ジュール君はクッキーを持ってウチのオフィスにコロナ禍陣中見舞いにやってきた。

「AもBも、ミンナ オナジ ナカマ ネー コロナ ニ マケズ ガンバルネー」

くうぅっ!いちいち負けるわ〜!!


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2020年09月09日(水) No.4