A-CUP CLUB DIARY -SEASON THREE-



プロフェッショナル


そういえば、件の指のケガの話だが、あの日、あたくしが搬送先の救急病院からまっさきに連絡をしたのは、看護師でありまたバイク乗りのお友達でもあるところのひろみ姐さんであった。

ひろみ姐さんの勤務する病院には、神の手を持つ手指専門の先生がいる。昨年、予後いまいちであったあたくしの骨折で曲がった指をキレイになおしてくれたのがこの先生だ。今回、こんな事情でケガをしたので、先生に看てもらえないかと、ダメもとで連絡を取ってみたのだ。

本当なら飛び込みの手術なぞ受けていないのだが、たまたま患者さんも少ない平日で、たまたま手術室も空いており、たまたま先生もやってくれる気になったのは本当に奇跡であると同時に、ひろみ姐さんのおかげである。とりあえず、緊急搬送先で撮ったレントゲン写真と、ケガした指の写真を写メ。搬送先の病院では「指先はのこらないかもしれないよ」と言われたのだが、ひろみ姐さんからの返事は

先生が「大丈夫。キレイにしてあげるから、早くおいで」って言ってるよ^^

あたくしは痛みや、転倒のショック、レースに出られない悔しさとか、かっこ悪さ、恥ずかしさでは一切泣かなかったが、今回唯一このときだけはちょびっと泣きたくなった。


さて、到着するとすぐ着替えもせず、そのまま手術台に上って、普通なら患者から見えないようにする術野も傷口もまるみえ状態で処置開始。先生の神のてさばきをナマで見られたのは実に幸運である。おそらく、普通の男子ならこの血まみれの手をみただけで卒倒してしまうとおもうが、こういうとき女子は強い。女性のほうが痛みや血に強いというが、まったくそのとおりだ。あたくしがいかに女らしいかと言うことを、みんなはもっとよく理解するべきだとおもう。

ところでこの手術の際、ひろみ姐さんもオペ看として入ってくれたのだが、彼女が突然術中に先生に聞いた。

先生、ずっと聞きたかったんですけど、そのピンセットに書いてある名前はいったいなんなんでしょう?

見るとあたくしの指をつまむ、血まみれのピンセットに「あけみ」か「さゆり」だったか女性の名前が彫られているのだ。しかもダイヤモンド埋まってますけど?!

しかも贈る人の名前を入れるならまだしも、贈り主自身の名前を入れるなんて、この女性は女性としてのプロにちがいない。

先生それはどういう御仁で・・・?

「うーん?んー・・・・まぁねぇ、それはねぇ・・・」

えー、じゃ、おいくつぐらいの方なんですか?

「ぅんー?まぁ、いいじゃないの、そんなことは」

やーん!なにそれー!

と、指をちくちく縫いながらする会話じゃねぇだろうと思いつつも激しく盛り上がり、しかしきっちり指を治してくれた先生とひろみ姐さんはじめ看護師さん、そしてピンセットを送ったその女性、みなさんの実にプロフェッショナルな仕事にあたくしは本当にあたまが下がるおもいであった。いまもって感謝してもしきれない。

あたくしの指は、まだまだ完治まで時間がかかりそうだが、引き続きみなさんにお世話になる次第。先生、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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2014年03月20日(木) No.322 (サーキット)

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