今でも忘れることのない幼少のみぎりの話
あたくしは幼稚園の卒業文集(のようなもの)に、「将来は看護婦さんになりたい」と書いた。
「たくさんの人を助けてあげたいからです」
なんとすばらしい幼稚園児ではないか!お年玉でマンションと車がほしいなどという甥っ子(5歳)に、あたくしの爪の垢を煎じて飲ませてやらねばなるまい。
しかし・・・あたくしは真実を告白しようと思う。
この理由はウソだ
看護婦さんになりたかった本当の理由は、恥ずかしくて誰にも言えなかったのだ。親友のミカちゃんをのぞいては・・・。ミカちゃんにあたくしは看護婦になりたい本当の理由をこっそりと耳打ちした。あのね、かんごふさんになりたいほんとうのりゆうはね・・・
「にんげんのないぞうをみてみたいの」
あたくしが真顔で言ったもんだからさぁ大変。ぎょっとして先生に言いつけようとしたミカちゃんをあたくしは必死で止めた。 そして以後、このことを人に話すことはなかった。あたくしは、幼稚園ですでに墓場まで持って行く秘密を抱えてしまうという実に業の深い子供だったのだ。
しかし、その後も人間の体の中を見たいという気持ちは変わらず、小学生になると、ドラマ「白い巨塔」の手術シーンが楽しみな、実に気味の悪い子供になってしまった。
まぁ、そんなあたくしである。手術なんてへのかっぱなのはおわかりいただけよう。
ところで本日久々に出勤したら、この巨大包帯な指を見てみんなが言った。
「あ、みそぎさん、手のほうはどう・・・ぷっ・・・ぷぷっ!」
「おう、みそぎ!大変だったな、だいじょ・・・ぎゃはははは!」
「わははは!」
「ひゃははは!」
同情されこそすれ、こんなに笑われるとはおもわなんだ・・・(--;
こんなやつらにあたくしはささやかな復讐を企てる。
傷口見てみる〜?ほら、ここからみえちゃうの、すごいんだよ〜っ
「ぎゃ〜!いいっ、いいっ!みたくないっ!」
彼らが身震いするのをみてあたくしはほくそ笑むのだ。幼稚園の頃のあたくしにも及ばない君たちは、まだまだ、青い。
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